彼が私の首筋に顔を埋める。
髪の毛の隙間をすり抜けるようにあたたかい吐息が触れると、その部分が火を当てられたように激しく熱くなるのを知ってか知らずか、彼は私を抱きしめる腕に力をこめる。
少し前から降り始めた雨はバスルームの窓を強く叩き、時折り遠くの方で雷鳴が低く響くのを空のバスタブの中で二人聞いていた。
私の背中に彼の鼓動が伝わり、それはとても激しくそしてとても切ない音に感じた。
背の高い彼には少し狭いバスタブ。
明日にはもうここにはいない彼を想い、私の鼓動もまたこの上なく切ない音色になっている。
それを悟られまいと力強く抱きしめられた腕を振り解こうとするのだが、結局私は逃れることができない。
愛している。
愛している。
彼の想いが首筋から静かに熱く伝わるのを、私はぐちゃぐちゃな感情で受け止めた。
そしてそれはたまらずに溢れ出し、熱く迸る涙となって彼のブルーのシャツに次々とこぼれ出してゆく。
この夜が永遠に続けばいい。
明けない夜はないというけれど、今夜だけはこのままで、こうして二人雨の夜に溶けていたい。
私のどうしようもできない想いを感じたのか、彼のすらりとした綺麗な指が濡れた頬を伝う。
離れたくない。
離れたくない。
回された彼の腕を力を込めて抱きしめてみる。
急に雷鳴が轟き、彼の腕の中で小さく身構えた私の唇にも同時に稲妻が激しく降り降りていた。
明日なんて来なければいい。
この雷雨が過ぎ去るまではこの感情のまま溺れていたい。
身体をよじり彼の首筋に力を込めて腕をまわすと、息が止まるほどに身体を引き寄せられたのは彼の無言の返事なのか。
悲しみも淋しさも切なさもすべてを流し消してしまうように、雨はさらに窓を強く打ちつける。
もう隠すこともない二人の想いは鮮烈な光となって、地鳴りのように響く雷鳴とともに暗いしじまに鮮やかに浮かび上がっていった。
完
まーたる、大好きなアーティストの米津玄師さん界隈でTwitterをしているんですが、ふと目にしたツイートからどんどん想像(妄想❓(*≧∀≦*) )が広がっていって書いたショートストーリーです。
雨夜にはそんな場面もあったりして(о´∀`о)
楽しんでいただけたら嬉しいです(*´∀`*)
最後まで読んでくださりありがとうございます
(*´꒳`*)